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離婚後の子どもの養育費は、当事者同士で約束してもきちんと支払われにくいことが有名です。金額も、一般的な感覚からして「低すぎるのでは?」と言われていました。

そこで最近、金額や取り立て方法について法が改正されたのをご存知でしょうか?

今回は養育費の金額がどのくらい上がったのか、またどのように取り立てやすくなったのか、いつから法改正が適用されるのかなど、わかりやすく解説します。

■もくじ

【1】養育費の相場金額が上がった
【2】新しい養育費相場の確認方法は?
【3】養育費を決め直す方法
 3-1.話し合う
 3-2.公正証書にする
 3-3.養育費調停を申し立てる
【4】民事執行法の改正で養育費の取り立てが簡単になる?
 4-1.何ができるようになるのか?
【5】第三者からの情報取得手続きでできること
 5-1.預貯金口座の確認
 5-2.勤務先の確認
 5-3.不動産や株式など
【6】財産を隠した場合の罰則も強化
≪監修ライター紹介≫
【7】養育費の財産開示手続きや第三者からの情報取得手続きは一人でできる?


【1】養育費の相場金額が上がった

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養育費の金額の相場は「家庭裁判所」が定めています。具体的には支払い義務者と受け取る側の「収入のバランス」によって決まり、支払い義務者の収入が高くなれば養育費の金額が上がり、受け取る側の収入が高ければ養育費の金額は下がる仕組みです。

ただ従来の養育費の相場金額はずいぶん昔に決定されたもので全体的に低額だったので「現状と合致していないのでは?」という批判も。そこで2019年12月、家庭裁判所が養育費の金額を増額しました。

これから養育費を決める方はもちろんのこと、今まで養育費をもらっていた方も新しい基準に合わせて養育費の金額を決め直すことが可能です。


【2】新しい養育費相場の確認方法は?

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新しくなった養育費の相場は、裁判所のサイトで公開されています。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html
子どもの人数や年齢などによって細かく分類されているので、自分たちの状況に合った表を参照して養育費を決定しましょう。


【3】養育費を決め直す方法

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養育費を取り決めたりこれまでの養育費の金額を決め直したりするには、以下のように進めます。


3-1.話し合う

まずは当事者同士で話し合って養育費の金額を取り決めましょう。これまでの養育費が低すぎるなら、上記の新基準にあてはめた金額を支払ってくれるよう提案してみてくださいね。



3-2.公正証書にする

金額について合意ができたら公正証書化をお勧めします。公正証書にしておけば、相手が支払わないときにすぐに給料や預貯金等を差し押さえられて便利ですよ。



3-3.養育費調停を申し立てる

話し合っても合意できない場合、家庭裁判所で「養育費調停」を申し立てましょう。調停で合意ができれば新しい基準で養育費を払ってもらえます。
合意できない場合、裁判所の「審判」で養育費の金額が決定。相手に支払い命令が下されますし、相手が従わなければ差押えも可能になりますよ。

離婚前の場合にはまずは当事者どうしで協議しますが、合意できなければ、「離婚調停」「離婚訴訟」によって養育費の金額を決めていきます。



【4】民事執行法の改正で養育費の取り立てが簡単になる?

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養育費関連でもう1つ重要なことがあります。それは「民事執行法」の改正。何やら難しそうな名前の法律ですが、中身は単純。相手の給料や預貯金などの差押えが容易になるのです。さっそくみていきましょう!


4-1.何ができるようになるのか?

民事執行法は「差押え(強制執行)」について定める法律です。
養育費を滞納されたら相手の給料や預貯金などを差し押さえなければなりませんが、そのときに使う法律が民事執行法。その民事執行法が改正されて2020年4月から施行されます。

民事執行法の改正により可能となるのが「相手の勤務先情報の取得」や「相手の預貯金口座情報の取得」。これまで強制執行をするときには、差し押さえる人(債権者)が相手の勤務先や預貯金口座を「特定」しなければなりませんでした。
「~の口座に預金があります」「〇〇社に勤めています」と債権者の方で説明しないと差押えができなかったのです。
しかし実際には多くの方が相手の預貯金口座や勤務先を知りません。結局は養育費を滞納されても差押えできず、泣き寝入りしていた方が多かったのです。

そこで民事執行法が改正され、一定のケースでは裁判所の手続きを通じて、相手の預貯金口座や勤務先を調べられるようになりました。

新しく創設された制度を「第三者からの情報取得手続き」といいます。



【5】第三者からの情報取得手続きでできること

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第三者からの情報取得手続きを利用すると、以下のような情報を取得可能です。


5-1.預貯金口座の確認

金融機関に情報照会することで、相手の預貯金口座情報を把握できます。
ただし「どこの銀行に照会するか」は債権者側で特定しなければなりません。たとえば「三菱東京UFJ銀行の支店照会」などであればOK。一方、「全国のすべての金融機関の口座照会」などはできないので要注意。



5-2.勤務先の確認

市町村や日本年金機構に情報照会することで、相手の勤務先を把握できる可能性があります。通常、どこかの会社で働いていたら住民税を納めていますし社会保険に入っているものだからです。
ただし勤務先の照会をするためには、先に「財産開示手続き」を申し立てる必要が。それをやっても相手の財産がわからないときに始めて「勤務先の照会」に進める仕組みとなっているので注意しましょう。



5-3.不動産や株式など

相手の所有不動産や株式なども調べることが可能に。不動産なら法務局に照会して調べられますし、株式については証券会社やほふり(証券保管振替機構)に照会するとわかります。

このように、2020年4月以降に養育費の不払いがあったときにはさまざまな機関に「第三者からの情報取得手続き」による照会を行い、強制執行の準備ができるようになって不払いが起こりにくくなります。

●養育費を払ってもらえなくて困っている
●相手の預貯金取引口座なんて知らない
●相手は絶対働いているのに、勤務先がわからない

こういった状況の方は、助かる可能性がありますね!


【6】財産を隠した場合の罰則も強化

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今回の民事執行法の改正で、相手が財産を隠した時の罰則も強化されるので知っておきましょう。

民事執行法では「財産開示手続き」という手続きが用意されていて、これを使うと裁判所が相手に財産状況を確認してくれます。たとえば「どこに勤務していますか?」「預貯金はありますか?どこの口座ですか?」など。

ただこれまでは、相手が嘘をついたり財産を隠したりしても「30万円以下の過料」という軽い制裁しかなかったので、嘘をつく人が多く多く実効性がありませんでした。
そこで今回の民事執行法では罰則が強化され「6か月の懲役または50万円以下の罰金刑」に引き上げられたのです。
これまでは刑事罰がなかったために過料となっても前科がつきませんでしたが、懲役や罰金は刑事罰なので、財産か維持手続きに協力しなかったら一生消えない「前科」がついてしまうリスクが発生します。

罰則も合わせて強化することにより、財産隠しをしにくくなるので財産開示手続きの実効性が高まって活用しやすくなりそうですね。



ライタープロフィール 福谷 陽子(法律ライター/元弁護士)


ぴりか
この記事は、福谷 陽子が担当しました。

弁護士として約10年実務経験を積み、ライターへ転身。
今は法律知識を活かしながら、著作権、男女問題、賃貸借契約や消費者問題、交通事故などさまざまな法律記事を執筆。ネットを使うときに役立つ法律マガジンも運営中。

▼元弁護士ライターぴりかの法律blog
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【7】養育費の財産開示手続きや第三者からの情報取得手続きは一人でできる?

養育費を滞納されて財産開示手続きや第三者からの情報取得手続きを行いたいとき、弁護士に依頼せず一人でできるのでしょうか?
いろいろな文献や資料を調査したり裁判所に問い合わせたり書類を作成したりして、手間や時間をかけられる方なら一人でできる可能性もあります。しかしこういった手続きはとても複雑で、理解しにくいこともありますし毎日の生活に追われながらだとハードルが高くなりますよね。できれば弁護士に依頼した方がスムーズかつ確実になってお勧めです。

●養育費の金額が安すぎるのでは?
●養育費を払ってもらえていない

そんなお悩みを抱えた方がいらっしゃいましたら、これを機に1度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか?