最近、在宅ワークができない職場で「コロハラ」が発生し、社会問題になりつつあります。コロハラとは「コロナハラスメント」の略。「コロナウイルスに感染しているのではないか?」という疑念や決めつけ、偏見からさまざまな嫌がらせが行われます。
今回は、コロハラ被害の実態と該当するケース、対策方法をご紹介します。
■もくじ
【1】コロハラとは
【2】コロハラの具体例
【3】コロハラは違法?
3-1. パワハラになる可能性
3-2. 名誉毀損になる可能性
3-3. 強要罪が成立する可能性
3-4. 不当解雇になる可能性
【4】コロハラにあった場合の対策方法
4-1. 社内の相談窓口を利用
4-2. 労働局や総合労働相談コーナーに相談
4-3. 弁護士に相談
≪監修ライター紹介≫
【1】コロハラとは
コロハラとは「コロナハラスメント」の略で、新型コロナウイルス感染症を理由とする“嫌がらせ全般”を意味しています。たとえば職場で咳やくしゃみをしただけで「コロナウイルスにかかっているのではないか」「もう職場に来るな!」などと言われる例など。「新型コロナ肺炎にかかって完治したのに、会社で差別的な取扱いを受けるようになった」という方も多く、酷いケースでは「解雇された」という話も聞きます。
緊急事態宣言が解除されたため、今後は在宅ワークを減らして職場への勤務を復活させる企業が増加してくるでしょう。職場に人が集まると、さらにコロハラが深刻化する可能性もあるため、会社員の方は要注意です。
【2】コロハラの具体例
●花粉症の症状に対して「コロナにかかっているのか!」と疑われて距離を置かれた
●咳やくしゃみをしたら「みんなを不安にして迷惑をかけたから、謝罪しろ!」と言われて土下座を強要された
●コロナ感染者の出た町に住んでいるというだけで「もう会社に来るな!」と言われた
●風邪をひいただけなのに「コロナ陰性の証明書を提出しろ」と言われた
●熱が出たため会社の指示で自宅待機となったのに「コロナでもないのに2週間も欠勤したから解雇する」と言われた
●新型コロナ肺炎になり、回復して出勤しようと思ったら解雇された、雇い止めにあった
コロナを理由に望まない異動を共用されたり、派遣社員や契約社員が雇い止めにあったりするケースも多々あります。
【3】コロハラは違法?
新型コロナウイルスに便乗した詐欺には、以下のようなパターンがあります。
3-1. パワハラになる可能性
まずはパワハラになる可能性があります。パワハラとは、職務上の優位性を利用して相手に業務に必要な範囲を超えた攻撃や環境を悪化させる嫌がらせを行うこと。
たとえば以下のような場合、パワハラとなる可能性が高いでしょう。
●咳やくしゃみをしただけで怒鳴り散らされた
●根拠もなくコロナウイルスにかかったと疑われ、チームや同僚から仲間はずれにされた。チームメンバーから外された
●他の従業員がいる前で「こいつはコロナにかかっている!」などと晒される
3-2. 名誉毀損になる可能性
コロハラは「名誉毀損」になる可能性もあります。名誉毀損とは「事実を摘示することによって他人の社会的評価を下げること」。
たとえば以下のようなコロハラは、名誉毀損に該当するでしょう。
●他の従業員のいる前で「こいつはコロナにかかっている!気をつけろ!」と言われた
●ネットに「〇〇はコロナにかかっているから注意」と書かれた
●社内メールで「〇〇はこの前咳をしていたし、コロナにかかっている」と決めつける内容を流された
3-3. 強要罪が成立する可能性
コロナウイルスを理由に義務のない行動をさせられたら「強要罪」が成立する可能性もあります。強要罪は「義務のないことを強要したときに成立する犯罪」であり、以下のような場合コロハラが強要罪になります。
●咳やくしゃみをしたら「謝罪しろ」と強く迫られて無理に謝罪させられた
●咳やくしゃみをしただけで土下座を強要された
●風邪をひいただけなのに「コロナ陰性の証明書を提出しろ」と強要された
3-4. 不当解雇になる可能性
コロハラで解雇や雇い止めにあった場合、不当解雇になるケースも。不当解雇とは、法律上の要件を満たさない解雇です。日本では労働者が強く保護されていて、会社は簡単に労働者を解雇できません。解雇が認められるには「解雇してもやむを得ない理由」と「解雇方法が社会的に相当であること」という厳しい要件を満たす必要があるのです。コロナの疑いがあるとか、コロナウイルスにかかったというだけで解雇されたら、不当解雇となるでしょう。
コロハラによる不当解雇の例は以下のようなケースです。
●熱が出たので会社の指示によって2週間休業したら「コロナでもないのに2週間欠勤したから解雇」と言われた
●新型コロナ肺炎になったが回復したので出勤しようとしたら解雇された
●新型コロナウイルスにかかった人がいる町に居住しているというだけで雇い止めにあった
【4】コロハラにあった場合の対策方法
もしも会社でコロハラにあってしまったら、以下のように対応してみてください。
4-1. 社内の相談窓口を利用
まずは社内の相談窓口を利用しましょう。大きな企業ならパワハラやセクハラなどの相談窓口が設置されているケースが多いですし、中小企業でもパワハラ対策のために専門窓口を用意するところが増えています。相談をしたら会社が実情を調査し、問題が明らかになったら解決するための対応をしてくれるでしょう。パワハラ対策法により、企業はパワハラへの適正な対応を要求されるからです。
4-2. 労働局や総合労働相談コーナーに相談
社内に相談窓口がない場合や頼りにならない場合、個人情報漏洩(ろうえい)が心配な場合、コロナでパニックになっていて社内相談窓口が機能していない場合などには、外部の相談窓口を利用しましょう。おすすめするのは、都道府県の労働局や総合労働相談コーナーです。
≪都道府県の労働局≫
全国の都道府県には、厚生労働省の出先機関として「労働局」が設置されています。社内でトラブルが発生したときに労働局に相談すると、アドバイスをしてもらえるだけではなく、会社との話し合いの「あっせん」も利用可能です。あっせんを利用すると、労働局が間に入って会社と話し合えるので、自分たちだけで交渉するより解決につながりやすくなるでしょう。
≪総合労働相談コーナー≫
総合労働相談コーナーは、全国の労働局や労働基準監督署内に設置されている労働問題の相談所。労働トラブルについて広く相談を受け付けてくれて、相談内容により適切な方法をアドバイスしてくれたり、適切な機関を紹介したりしてくれます。こちらのサイトからお近く相談先に連絡してみましょう。
4-3. 弁護士に相談
労働トラブルで困ったときには弁護士によるサポートも有効。弁護士は「パワハラになるのか」「名誉毀損になるのか」「不当解雇といえるのか」などの法的判断を正確にできますし「誰に対してどのような権利主張ができるのか」も明らかにしてくれます。会社や上司との交渉や労働審判などの手続きも依頼できますし、解雇された場合には裁判を起こすこともできて、権利を実現しやすくなるでしょう。
コロナウイルスによって人々の不安感が高まっているため、ある程度の厳しい対応はやむを得ないとはいえ、コロハラが許されるものではありません。職場でコロナウイルスによるハラスメント被害に困っているなら、できるだけ早めに行政や専門家へ相談してみましょう!
ライタープロフィール 福谷 陽子(法律ライター/元弁護士)
この記事は、福谷 陽子が担当しました。
弁護士として約10年実務経験を積み、ライターへ転身。
今は法律知識を活かしながら、著作権、男女問題、賃貸借契約や消費者問題、交通事故などさまざまな法律記事を執筆。ネットを使うときに役立つ法律マガジンも運営中。
▼元弁護士ライターぴりかの法律blog
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